![]() |
アンディ・サマーズ自伝 ポリス全調書 著:アンディ・サマーズ 訳:山下理恵子 ブルース・インターアクションズ 2007-12-07 |
ちびちび読んでたので最近やっと読了。ページを追うのがすごく楽しかった。
スティングの自伝は「トップスターの独白」って感じがしてそれはそれで面白かったけど、アンディの文章はユーモアと機敏に溢れていて、根っからの芸術家肌なんだなあという印象。文学・映画マニアだけあって表現の抽斗が多く、公演で訪れた様々な国の描写からは光の色や土の匂いが伝わってくるようです。いろんな国でいろんなひどい境遇に陥って涙目になりながらも、へこたれずにまた同じ場所を訪れ、次の時には土地柄を好きになってしまったりする不屈の精神が素敵すぎ。あと各国の警察にマークされすぎ。
常にギターに対して勉強熱心であったこと、若い頃からいろいろなミュージシャンと交流があったことを通して、ロックギターにブルースやサイケデリック等のさまざまな要素が入ってきた経緯を独自の視点から描き出しています。まさにギター史の生き証人。「僕がクラプトンにレスポールを売り渡さなかったら、このギターはこれほど有名にならなかったのかも」っていう話はわざとフカシこいてる気もしますが興味深い。ジミヘンとのセッションでベースとギターを交代して弾き合った話もじんわり来ます。
そして、生涯の相棒であるテレキャスターとの出会い。華やかなセッション活動から離れて細々と暮らしていた時期にこのギターを手にし、再び音楽への情熱と渇望が沸き返ってきて、仕事や結婚を含めた生活が上向きになっていった話。しかしその数年後また人生に軋みが生じてきた時、追い打ちをかけるような悪夢がギターに降り掛かる…。ううう。これはヘコむわ。
本の後半くらいがポリス時代のエピソード。初来日公演における伝説の(伝説が多すぎだよこの人達)京大西部講堂事件がやけにあっさり書かれていたのは残念だったけど、その数年前アニマルズのメンバーとして来日した時、ヤクザ屋さんに名指しで殺されそうになって命からがら日本脱出したアンディからすれば、大学の講堂で学生が暴動起こしかけた程度では大した事だと思わなかったのかも知れません。当書には記されてませんが、この後BBCのインタビューで事件について聞かれたスチュワートは「いつもの事さ」と答えたとか。
ポリス末期の話は、聞くも涙語るも涙。アンディが書いた曲Omegamanのシングルカットをスティングが全力で阻止した話は初めて知った。うー、ポリスで2番目に好きな曲なのにあのハゲがああああ…(ちなみに1番好きなのはDarkness、2番目が同列でOmegamanとBring On The Night)。でもスティングがそういう人だったからこそ、アンディとスチュワートも負けず劣らず自己主張が激しかったからこそ、ポリスは凄いグループたりえたのだろうなあ。挙げ句の果てには「もうギターソロは入れたくない」とまでスティングに言われたらしいけど、それでも最低限の音で最高の効果を出せていたのはアンディが優秀な音空間設計職人だからであり、他の人間ではとても到達できない領域だったのでしょう。
あ、日本版は訳が変なので、原書で読める人はそのほうがいいかも。「11番目のコード」って11th? とか脳内変換しながら読んでました。音楽用語の間違いは仕方ないとしても、固有名詞の表記がコロコロ変わるのはいかんですよ。
この本は映画化が決定しておりまして、来年1月のサンダンス映画祭で公開されるそうです。ところで一番面白い人生送ってそうなスチュワートの自伝出版はマダー?? 父ちゃんがCIAの創始メンバーだったり、一族揃って色々すごい人達だし…。(補足:ほんとにスチュも自伝書いてるらしい。楽しみ楽しみ)
0 Comment:
コメントを投稿